東京創元社とRubyの関係
東京創元社とのつきあいは、おそらく二十歳の頃にSFを読み出したころからである。新幹線で帰省する間がひまで仕方なく、指定席を買うのが面倒だったぼくは横浜駅の地下街で創元SF文庫を5、6冊買い込んでは小倉に着くまでの間デッキに座り込んでそれを読みふけっていた。帰省でなくとも創元SF文庫を読みふけっていた。そうしてSFに飽きたぼくはミステリを読み始めることになる。
もともと母親の本棚から赤川次郎や西村京太郎のミステリを借りて読み始めるようになったのが小学生のころで、小学生らしくずっこけ三人組なども読んでいたのだが、つまりはぼくの読書のスタートはミステリから始まったのである。SFで翻訳物への抵抗がなくなっていたぼくはミステリに復帰したときに海外ミステリを読みあさるようになる。ハヤカワミステリ文庫、講談社文庫などとならんで創元推理文庫の海外ものをよく読んだ。
創元推理文庫の海外ものの背表紙は著者によって背表紙の色が違っているのだが、日本の作家のものは黄色で統一されている。ミステリ界の確固たる地位を築いている鮎川哲也賞もそうだが、あの黄色い背表紙には東京創元社の個性と意思が秘められているように思えてならない。
午前零時のサンドリヨン (創元推理文庫)
相沢 沙呼
東京創元社
文庫
2012-10-20
その黄色の背表紙の文庫にまた一冊、鮎川哲也賞の受賞作が追加された。この作品にはおそらく世界ではじめてプログラミング言語のRubyが登場するのである。おそらくRubyistはだれも知るまい。そう思いここに紹介することにした。たまたま著者とちょっとだけ知り合いなので身内びいきみたいなものである。ぼくは自分が身内と思った人たちに対してはえこひいきをするのだ。注意が必要である。