はやぶさが打ち上げられた日

はやぶさが打ち上げられた前後のぼくの日記を見返したら、ちゃんとそのころの様子を書いていました。
以下に抜粋しておきます。

2003年

４月２９日（火）
あ、それから、５月上旬にユルさんと旅行にでかけます。またたびツアーです。その間のことは、家に帰ってきてから日記に書くつもり。当然ながら旅行中にはこの日記の更新がありません。旅行直前にまたお知らせします。ちなみに旅行の目的は、内之浦のＩＳＡＳの射場へ、muses-C を積んだＭ－Ｖロケットの打ち上げを見に行くことです。嘘です。ただ、内之浦の近くに行くことは確かであります。内之浦ってつまり鹿児島県ですが。

４月３０日（水）
muses-C の最新情報。ついに、muses-C がＭ－Ｖロケットの最上段モーターに取り付けられました。着々と進行中。最上段モーターとは、つまり最上段のロケットエンジンのことです（固体燃料の場合、エンジンのことをモーターという）。実際にはこれにフェアリング（カバー）がかけられてようやくロケットらしい姿になります。もちろんこれは最上段なので、この下にもモーターがつきます。最新情報のページではモーターのことをモータと書いていますが、これは脱字ではなくてＪＩＳ規格に基づいた表示です。森博嗣さんのファンや工学系のかたがたにはお馴染みでしょう。

５月３日（土）
　muses-C は着々と作業進行中のようです。ついにフェアリングがかぶせられてそれらしい形になってきました。もう打ち上げ五秒前って感じで、僕もどきどきしています。
　ちなみに muses-C という名前は日本の衛星らしくないとお思いのかたがたもおられるでしょうが、これは打ち上げが成功するまでのコードネームみたいなものです。打ち上げが成功したあとは日本らしい名前が与えられることになります。名前から想像できると思いますが、muses-A や muses-B ももちろん打ち上げられていて、それぞれ打ち上げ後は「ひてん」「はるか」と名付けられています。どうでもよいお話。

５月７日（水）
　muses-C は打ち上げ後に日本の衛星らしい名前がつけられる、というお話をしたけど、もう僕とユルさんは muses-C を「たんぽぽ」と名付けている。ほら、ふわふわと飛んでいく綿毛のイメージとなんとなく重なる感じでしょ。打ち上げ後にＩＳＡＳ（宇宙科学研究所）がなんと名付けようと、このサイトでは muses-C のことをたんぽぽと呼ぶことにします。
　で、そのたんぽぽの最新情報。ついに２段目モーターも組み付けられ、いよいよＭ－Ｖロケットの姿が現れてきました。カッコいいなあ。どきどき。
　たんぽぽは２００５年６月に、地球から３億キロ離れた小惑星「１９９８ＳＦ３６」に到達します。小惑星というと、その大半は火星と木星の間にあるのだけど、この「１９９８ＳＦ３６」の公転軌道はこの時期、火星よりも内側にあります。だからたんぽぽのターゲットとして選ばれたんだけどね。ちなみにこいつは長径が５００メートルほどのでこぼこした小惑星であります。
　前にも書いたけど、この小惑星のサンプルを１グラムほど採取して地球に持って帰るというのが、たんぽぽのお仕事。月以外の天体のサンプルを人類が手にするのはこれが初めてであります（隕石などをのぞいて）。国際的にもかなり注目されているプロジェクトです。

５月８日（木）
　たんぽぽの打ち上げがいよいよ明日に迫って参りました。９日の午後１時２９分２５秒にリフトオフの予定であります。どきどき。ＩＳＡＳはネット上で、打ち上げのライブ放送もやるみたい。こちらのサイトで打ち上げ映像の配信予定。うおー、僕も見てーよー。でも仕事で見れないのであります。とほほ。

５月９日（金）
いよいよ今日、たんぽぽの打ち上げです。ＩＳＡＳとしての打ち上げはこれが最後だし、Ｍ－Ｖロケットの勇姿もこれが最後であります。固体ロケットなんて、もう世界のどの宇宙機関も作らないだろうなあ。固体モーターはブースターに使われるくらいでしょう。よよよ。こうなったらロケット花火を打ち上げまくって憂さ晴らしだ（ロケット花火も固体モーターです）。はー、ホントにマジで打ち上げ見てー。見たい見たい見たい見たい見たいっ。一日延期しないかな。そうしたら離床していくＭ－Ｖロケットを見れる可能性はあるんだもの。

５月１０日（土）
　ホントはいろいろと忙しくて更新なんてしてる場合じゃないのだけど、なんてったってたんぽぽが打ち上げられたからね。それだけ書いておこう。
　定刻通りに内之浦の射場からＭ－Ｖロケットは打ち上げられました。たんぽぽは惑星間軌道に乗り、太陽電池パネルを展開、太陽を捕捉したとのこと。順調であります。なお、世間では muses-C を「はやぶさ」と命名したそうだけど、このサイトではたんぽぽで通しまくります。